- RPS-Japan
田中宏明会員の写真活動
2010年4月14日 (水)
写真・武道・料理・茶道
英国王立写真協会 日本支部のメンバーは多士済々だ。それぞれをご紹介できればと思っている。本ページでは田中宏明会員の作家活動についてレポートしよう、ご自宅を訪問して取材させていただいた。(レポート:豊田芳州)
初めにもてなしていただいたのは抹茶だった。これは田中宏明会員のパーソナリティーを表している。田中会員(以下、田中さんと呼ばせていただく)は風流人である。しかし、武道家でもあり、板前でもある。
田中さんの代表作は、『乙女不二 一年三百六十六変化(へんげ)』である。箱根の乙女峠から定点観測撮影した作品群だ。まず、富士を「不二」と書いたところに妙がある。「三百六十六」は、うるう年で1年をカウントしているからだ。
今までに何回も個展を開催してきた。松戸・伊勢丹、銚子・十字屋、津田沼・丸善など、会場はいずれも地元千葉県のデパートや書店である。店舗が会場を提供するのには、作品が売れるという前提がある。売れない作家にはギャラリーを提供しない。田中会員は売れる写真を目ざしたのである。フランスでは写真と絵画は同格だという。日本の写真環境もそうなってほしいと願っているが、いまのところ、自身の率先垂範しかないのである。地元開催にもこだわりがあるようだ。『乙女不二 一年三百六十六変化』は、昨年、地元柏市の「アートラインかしわ2009」で展示された(2009年11月6日~30日 乙女富士写真展工房西山荘 ☎04-7171-3230)。
自宅には「春夏秋冬の間」(写真右)という部屋がある。富士山の四季を掛け軸や屏風に装丁して展示されている。ギャラリーというよりは茶室のようだ。田中さんによると、戦国時代、武士は出陣に備え主君より一服の茶を進呈されたという。いざ出陣は、「いざ撮影」に通じるところがあるのかもしれない。写真を侘茶と融合させるところに田中さんの心髄がある。